CD-600
CROWN CD-600


1980年代後半〜90年代前半期において家電量販店のチラシ上、ほぼ毎週目玉商品として君臨していた国内メーカー、
「クラウン」の事実上最上級機種である。CD-600の後継機種にCD-590というモデルが存在する。

◆外観について:
クラウンならではの黒を基調とした古めかしい野暮ったいデザイン。
しかし、良く見ると適材適所といったように、必要とすべき機能がブロックごとにまとめられているのが分かる。
メッキ仕上げされたスピーカーのダミーリングが配されているところは国産バブル機に良く見られる「バブルらしさ」が
こういったマイナー機でも感じられるのはありがたいことだ。
きわめてスクエアなデザインは丸っこいデザインが溢れた現在においては逆に新鮮味が感じられる。

◆音質について:
肝心の音質は至って普通であるが、現在流通されているデフレ機種ほど乱暴な音ではない。
本機には高音域の絞りを調整する「トーン・コントロール」の他、「ベース・ブースト」が装備されている。
この「ベース・ブースト」はイコライザーで本体の全スピーカーの音の低域を増幅する従来型の低域増幅方式ではなく、
本体内部にビルトインされたサブ・ウーハーを駆動させる方式である。サブ・ウーハーからの低域はカセットデッキの下、
場所で言うと2番デッキの真下に装備されたダクトから放出される。(1番デッキ真下のダクトはダミー)
スピーカー・システムの構成として挙げるのであれば「2.1チャンネル」が相応しい言葉であろう。

前述で音質についてを書いてしまったが、もちろんこのサブ・ウーハーは入れない時での感想である。
このサブ・ウーハーはベース・ブーストのフェーダーで出力レベルを調整できるがMAXの状態にしても押し付けられるような
圧迫感のある低域ではなく、やや非力なのが災いしてか、フュージョン系やクラシックなどのソースでは長時間聴いていても、
聴き疲れがおきにくい、至ってマイルドな音質である。

◆使い勝手について:
一般的な大手メーカー品と比べてしまえば劣る点は否めないが、チグハグな点・不便な点があるのは大手メーカー品では
味わえない、一種の魅力であると思う。(ただ単に割り切って使えば問題ないだけ)
しかし、最上位機種でさえ、CDプレーヤー部のサーチ機能・ランダム再生機能が省略されてるって、何よ?
クラウン的に言えば、サーチやランダム再生することは「アーティストに失礼な行為」とでも言いたいんでしょうかね?
BGM的にCDを使われる方にはクラウンはお勧めできます。



◆細部について1:<上面ブロック>


●タイマースタンバイ切替付きパワースイッチとLED内蔵ボリュームつまみ。(モータードライブらしい)
  ボリュームつまみをズームにて撮影してみました。なかなかカッコイイですね。


●「トーン・コントロール」と「ベース・ブースト」つまみ。白枠に赤文字で強調している所が微笑ましい。
●ファンクション切替(CD/テープ/チューナー)とテープ・セレクター(2番デッキ専用、再生のみハイポジ/メタル対応)
  奥に見えるのはテープダビング速度切替。ダビング状態にしなくても早送りなども倍速動作できたりする。


●CDドア(トップローディング)部分。「DIGITAL」と強調しているのもこの頃では定番だった。
  光の映り込みで見えないがその下には「12cm/8cm DISC COMPATIBLE/REMOTE CONTROL」と書いてある。
  リモコンと言ってもCD再生に関する操作と音量操作ぐらいだけであろう。(リモコンなしで入手)
  右の画像をご覧いただくと分かるが、「レンズに触わるな」といった表記が日本語である。(※)


●チューナー周り。スイッチは左からFMモード切替、受信バンド切替。FMステレオ受信インジケーター付き。
  選局はおなじみの手動式である。



◆細部について2:<前面ブロック>


●フロントパネル周り。左からスリープ/ウェイクアップ・タイマー付き時計、リモコン受光部、CD表示部、CD操作部。
  時計表示部とCD表示部、CD操作ボタンの意匠、やはりどこかで見たことがあるような・・・。(※)


●中央の4つのキーの意匠、どっかで見たことありませんか?
  CD再生中、スキップボタンを押し続けるとサーチになると思うでしょ?
  クラウンではサーチにならず、どんどんスキップして行くのが「常識」です。
  よって、同じ部分を繰り返して聴く、といった使い方は「できません」!!


●カセット・デッキ周り。左の1番デッキは録音/再生(ワンウェイ)、右の2番デッキは再生専用(オートリバース)。
  1番デッキはフルオートストップなのに対し、2番デッキはなぜか再生のみオートストップ。
  オートリバース付きの2番デッキにはドア部にテープ進行方向を表示するLEDが装備されている。
  オートリバースにはA-B往復1回のみと、永久ループのどちらかが選択できる。
  一時停止機構は1番デッキのみに装備されているので、二つのデッキでリレー再生をさせるとなると、
  2番デッキ→1番デッキといった、本来とは逆の順番で再生されることになる。
  これはテープダビング時のシンクロスタートを優先的に考えたからではなかろうかと勝手に解釈している。


●カセット・デッキ内部の様子。左が1番デッキ、右が2番デッキである。
  左の1番デッキは最近の激安ラジカセと同じ様な構成なのに対し、右の2番デッキはどこかで見たことがあるような機構。
  2番デッキのヘッドはありがちな4トラック用ではなく、1番デッキの2トラック用を一回り小さくしたようなヘッドを機械的に
  180度回転させているリバース機構である。


●カセット・デッキ真下(2番デッキ下)のダクト。ここからマイルドな低音が出てきます。


●清掃がてらに分解したら、ビルトインのサブ・ウーハーを発見!クラウンのラジカセにしては生意気だ!?
  接合部にはご丁寧にパッキンがはめ込まれており、10本程のビスでしっかりフタがされてました。
  低域が出そうには見えないものの、ストロークはそこそこありそうです。
  右の画像をご覧になればお分かりかと思いますが、実際に出ている低音はウーハーユニットの背面の音だけの模様。
  前面の音は殺しているので「ケルトン方式/ASW方式」と言っても良いと思われます。
  圧倒的ではないものの、比較的なめらかな低域が出ていた理由も分かったような気がします。


●間近で覗けば覗くほど「うさんくささ全開」なスピーカー・ユニット部。
  8cm程度のフルレンジ・ユニットは結構奥の方にマウントされています。
  低音増幅回路は通って来ないので、ベース・ブーストがMAXの位置であったとしても、こちらのスピーカーからは
  トーン・コントロールに準じた、安っちぃ音が出力されます。(最近の廉価機種よりは遥かにまし)



◆細部について3:<背面/その他ブロック>


●キャリング・ハンドルのアップ。筆記体で「Digital Audio Sound」と金色で書いて、優雅さ?をアピールしています。
  それにしても赤ラインのアクセント、どっかで見たことが・・・。(※)


●背面の端子など・・・。
  CD音声出力端子はRCAピンタイプです。
  右上はモノラル・ミニジャックタイプのマイク入力端子ですが、拡声やカラオケなどに利用できるミキシング・マイク
  入力ではなく、カセット録音時の生録用のマイク入力です。(マイク内蔵ではないため)
  右下はチューナーのビートキャンセラーのモード切替スイッチです。


●乾電池ボックスとコーションプレートの様子。
  電灯線(AC100v)の他、乾電池では単1乾電池8本(DC12v)で動作します。
  時計/タイマー部分のみ、本体電源とは別に独立しているため、この単1乾電池の裏側に1本、単3乾電池が入ります。
  コーションプレートの表記も良く見ると「コンパクト・ディスク・プレーヤー」と「ステレオ・ラジオ・レコーダー」と言う様に、
  なぜか独立しているかの言い回しになっています。「コンパクト・ディスク・ステレオ・ラジオ・レコーダー」で良いかと。
  定格消費電力は35wと、なかなかの大食いさんです。便所の白熱電球と同じぐらいですね。
  一般大手メーカーが日本製の時代に、クラウンでは世界の最先端を突き進む、中華人民共和国製造となっております。



◆主な特長:
<総合>
2.1チャンネル方式(8cmフルレンジ×2、6cmサブウーハー×1)
推定最大出力:10w前後
使用ユニットの種類:凹型布エッジ、紙コーン(サブ・ウーハーは紙プレスコーン)
重低音回路BASS BOOST(サブ・ウーハーのみ有効)
トーン・コントロール(フルレンジ側の高音部のみ)
モータードライブ式音量つまみ(赤LED内蔵)
ヘッドホン端子(ステレオ・ミニジャック)
マイク端子(モノラル・ミニジャック、カセット・デッキ録音時のみ有効)
AC100v(50/60Hz)または単2乾電池6本(DC9v)
専用リモコン装備(持っていません)

<CD部>
トップローディングタイプ
サーチ機能・ランダム機能なし(クラウンの伝統?)
1曲/全曲リピート再生機能・20曲プログラム再生機能
CD-OUT端子(アナログ、RCAピン)
再生可能CD:12cm、8cmシングル/CD-Rもなぜか読めたりする(CD-DA)

<カセット・デッキ部>
マニュアルロジック駆動ワンウェイ(Aデッキのみ)
マニュアルロジック駆動オートリバース(Bデッキのみ。ヘッド回転式)
テープ進行方向表示緑LEDインジケーター(Bデッキのみ)
フルオートストップ機構(1番デッキのみ。2デッキは再生のみオートストップ)
ハイポジション/メタルテープ対応(Bデッキ、再生のみ)
等速/倍速ダビング機能(ダビング時以外も倍速駆動可能)

<チューナー部>
マニュアルチューニング
AM/FM(ステレオ・モノラル切替可)、TV1-3/TV4-12
FMステレオ受信インジケーター(赤LED)




※「どっかで見たことがあるような・・・」の情報:

当博物館では最近、衝撃的な画像を入手した。(画像提供/ogadai様)



本ページでピックアップしているクラウン・CD-600のベースモデルと思われる機種、日本ビクターのRC-X3である。
重低音がバクチク「しない」でボロクソ有名なシーディアンの廉価モデルである。
さすがに一部の意匠は異なるが、その風貌はまさにそっくりさんですね!!
相手がRC-X3なら、音はクラウンの方が余裕で勝てるはずです。(たぶん)



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